【オンライン英会話】英会話レッスン受講の心得(理論編)
2024年9月27日
本記事は英語学習における英会話レッスンの意識すべき目的や効果的な活用方法をいくつかのSLA(第二言語習得理論)の研究論文に基づき、出来るだけ分かりやすくまとめたものです。
そして、本記事はかなり長くなりますので「理論編」と「実践編」の2部構成に分けております。
理論からしっかり理解したい方は当記事「理論編」から、英語学習に関する知見を深めて頂ければ幸いです。
逆に、理論は良いので具体的な活用方法や注意点等を知りたい!という方は「実践編」にそのまま飛んで読んでみてください。
https://note.com/money_english/n/ne866f6041c26
さて、ここからは「理論編」の序章となります。
言語学習の様々な活動の中で、双方向のコミュニケーションである英会話トレーニングというのは
- そもそもどのような立ち位置にあるのか
- なぜ必要なトレーニングなのか
- どの程度続けると効果が出始めるのか
- 具体的なトレーニング効果は何があるのか
- どのように活用すると効果的なのか 等
この理論編では、様々な角度の上で、「何故英語学習に英会話トレーニングが重要なのか」ということをSLAをベースに、出来るだけ重要な項目にフォーカスしながらシンプルにお伝えしていければと思います。
言語力を定義する4技能とは
まずは定義的な話になりますが、「英語が出来る!」とはどのような状態を指すのでしょうか。
言語力は大きく分解すると4要素あり、それがいわゆる「4技能」というものです。
上記画像にもありますが、
「読む・聴く・書く・話す」の4つの技能が運用出来ることが
↓
「言語(英語)が適切に運用が出来る」 ということになります。
言語学習の基本的な考え方とは
さて、「英語が出来る」ということとその中身が分かったところで、
「どのようにこの4技能がそれぞれに作用しあって、言語力が伸びていくのか」
ということを説明していきたいと思います。
結論から言うと、
「インプット」
(意味の分かる英文を読んだり・聴いたりして、実際に使われている英語を取り入れていく)
と
「アウトプット」
(読んだり・聴いたりした文章を実際に書いたり・話したりして、実際に英語を使っていく)
は言語学習においてどちらも欠かせないものだと言われています。
なので、
TOEICのような「読む・聴く」偏重の学習だけでは不足ですし、
英作・英会話のような「話す・書く」偏重の学習だけでも不十分です。
「たくさん読んで・聞いて、たくさん書いて・話す」
シンプルですが、これが本来の言語学習の在り方です。
よく勘違いされるのは、インプット学習といえば「単語を覚える」・「文法を勉強する」・「フレーズ・構文等を覚える」のようなものを思い浮かべる人が多いですが、これは言語学習理論の観点から言うと効果的なインプットではありません。
あくまでも、適切なインプット(理解出来る英文を読んだり聴いたりする)が出来る為の基礎学習であるという理解が必要です。
(詳しく知りたい人はインプット仮説・アウトプット仮説で調べてみてください)
Swain (1995), Three functions of output in second language learning
Principles and Practice in Second Language Acquisition
インプットとアウトプットはどのような比率で取り組むべきか
学習者のバックグラウンドや運用レベルにもよりますので一概には言えませんが、初級レべルであれば比較的インプットの比率を多くすべきで、上級者であれば比較的アウトプットの比率を多くするのが好ましいと言われています。
詳しくはMONEY ENGLISHの過去記事をご参照下さい。
https://note.com/money_english/n/n6b71acddd989
SLAに基づくアウトプット学習の効果
さて、ここからはようやくアウトプット学習の効果について触れていきます。
ここで言及するアウトプット学習というのは、「英作文等のライティングや英会話等のスピーキング」を指すこととします。
アウトプットトレーニングにより得られる主な学習効果は主要なSLAによると大きく4つあると言われています。出来るだけシンプルにまとめます。
気付き機能(Noticing)
1つ目はNoticing(気付き)と呼ばれる効果です。
英語を学んでいると、何か言いたいことがあるのにうまく言えないという経験をしたことが日々あると思います。
例えば、
「あの映画のエピソードは切なかったな・・」
と言いたいのに、「切ない」という英単語が分からない。
これが気付きです。
気付きが起こると、「切ないってなんて言うんだろう?」と例えば聞いたり、調べたりしますよね。(ちなみに、ストーリーが切ないという文脈だと”Heartbreaking“がよく使われます)
アウトプットを通して、自分が言いたいこと(want)と現在の自分の能力で表現できること(can)との間にギャップがあることに気づき、そのギャップを埋めようと行動を起こします。
このように、アウトプットトレーニングを通して、インプットの機会を触発することが出来るわけです。そうすると英語に触れる時間・英語のことを考える時間がより多くなりますよね。
それこそが気付き機能が及ぼす学習効果です。
仮説検証機能(Hypothesis formation and testing)
2つ目は、Hypothesis formation and testing(仮説検証機能)と呼ばれる効果です。
皆さんが英会話をする時には、無意識的に「どう表現すれば相手に伝わるか考えて(仮説を立てて)話している」と言われています。
そして、相手の反応を見て「自分の英語が相手に伝わるかどうかについても確かめている(検証)」というのがこの仮説検証の流れです。
「あの映画のエピソードは切なかったな・・」
「切ないってなんて言うんだろう。。lonelyかな?」と思いつき(例えです)
「The episode of the movie was lonely..」
と言ってみると、
「mmm,, lonely? what do you mean?」
(ロンリー?どういうこと)
と反応が返ってきて、伝わっていないことが分かりました。
そこで、正しい表現を調べてみた上で再度英文を作ってみます。
「The episode of the movie was really heartbreaking!」
反応は、
「Oh, yes. It’s defenitely a heartbreaking ending.!!」
(本当に!めっちゃ切ない最後だったよね)
と今度は正確に伝わったようです。
自分なりに知っている単語や表現
相手がそれを聞いて”heartbreaking”と分かってくれたら、学習者は”heartbreaking”の英語を覚えると同時に、自分の英語の伝え方が正しかったという喜びや自信を手にします。
学んだものを使ってみて、〇・×が付けられる感覚は、学校で言うテストの機能に近いかもしれませんね。まさに自分がしっかり使えるかどうかの練習問題に取り組んでいるイメージです。
メタ言語的機能(Metalinguistic reflection)
3つ目は、Metalinguistic reflection(メタ言語的機能)と呼ばれる効果です。
ただ、この3つ目にはあまり触れたくありませんし、触れる必要もないのではないかと思っています。
何故かというと、日本人学習者が特にこのネガティブな意味合いでメタ言語機能を意識する人種だからです。下記で説明します。
日本人は、
「人の目を気にする」
「人の振り見て我が振り直せ」
と昔から言われるほど、自分自身が他人からどう見られているのか、ということや他人のことがとても気になる人種なのです。
このメタ言語機能とは、簡単に言うと
「他人(もしくは自分)の英語の間違いを見て、自分の英語を直そう」
ということです。
英語に対する強いコンプレックス故なのか、
「あの人があんな発音の間違いしている!文法が間違えている!」
ってよく気になったりする日本人が多い印象です。
(日本人が英語を話している動画のコメント欄なんかに文法・発音警察が多かったりしませんか?)
私たちは普通、言語の意味や相手と対話する話の文脈・流れに意識を向けて話しています。
一方で、自分が話の中で使用した動詞の時制が過去形だったとか、「は」と「が」のどちらが助詞として適切かとかを意識して話している人はいません。
本来言われるメタ認知機能とは、
「あの人、discuss aboutと言っているな!(本来discussは他動詞なので直後に前置詞を取らない)」と自分や相手のアウトプットを振り返る働きにより、インプットの段階では気にしていなかった文法事項に対する意識が生じ、それを通して自分の英語を正解に近づけていくアクションを取ることを指し、このプロセスを通して一定の学習効果を期待することが出来ます。
ですが、日本人学習者のほとんどがこのメタ認知機能により、自分が話す英語は「完璧な英語でなければいけないんだ」と思ってしまい、完璧な文法、完璧な発音等を目指すようになってしまうケースが多いのです。
これにより英会話レッスンの中でも、「完璧な英語を話すこと」が目的になり、発話量が減ったり、執拗に自分の不完全な英語を気にしてしまったり、英会話そのもののモチベーションが下がったり、等あまり良いことが無い印象です。
英会話そのものの目的を見誤らないように注意が必要です。
完璧な英語を話すことが目的ではありません。適度にフィードバックを受けながらとにかくたくさん話していくトライをすることが重要です。
自動化機能(Automatization)
4つ目は、Automatization(自動化機能)と呼ばれる効果です。
4つの中で、これが最も重要でかつ、皆さんに得て頂きたい学習効果であるということをお伝えしておきます。
この機能を簡単に説明すると、
「英語脳」を作ることに直接的に効果があるというわけです。
(英語脳:日本語を介さずに英語を理解したり、発信したりできる状態)
英語脳については下記記事も参考になりますので、是非ご覧ください。
https://note.com/money_english/n/n07590b0f5cc7
アウトプットを繰り返し行うことにより言語処理能力が高まりかつ、英語で思考する時間が増え、自分が正しいと思う第二言語がスムーズに発話できるようになります。
いわゆる「流暢で正確なスピーキング」を目指すことが出来ます。
ゆっくりしか言いたいことが話せないという課題感や、
なかなか言いたいことが相手に伝わらない等の課題感は、
インプット(読む・聴く)とアウトプット(書く・話す)を同時に行うことで少しずつ解消されていき、最終的には限りなく母語に近い感覚で英語を運用することが出来るのです。
なので、英会話レッスンは1回1回で何かを意識的に学び得ていくという感覚よりも、長期的に回数をこなしながら効果測定(レベルチェック)等を行っていくことが理想です。
英会話をやっていたけど、伸びないという人ほど、圧倒的にアウトプット量不足な場合が多いです。根気強く続けて、英語を自動化していきましょう。
以上見てきたように、アウトプットに備わっている4つの役割が、第二言語の正確な習得に結びついていきます。
どの程度の学習時間が必要か
では、どれくらいアウトプットをしたらいいのかということですが、
現在レベルと目標レベルにもよるので下記は1つのサンプルをベースに目安をご紹介します。
スタートレベル:CEFR A2レベル(英検準二級程度)
目標レベル :CEFR B2レベル(英検準1級程度・ビジネスレベル)
詳細は省略しますが、A2程度の英語レベルを持った学習者がB2程度のレベルを目指すにあたり、「約 1,200~2,800 時間」必要ということが統計の結果として出ています。
インプットがそのうちの7割だと仮定し、アウトプットがその3割だとすると、「約360~840時間」のアウトプット量が必要になるというわけです。
毎日25分のオンライン英会話を365日毎日行ったとしても、計146時間ですので、少なくとも25分のアウトプットなら2年間毎日行うくらいのペースで学習が必要であるということが分かります。
(MONEY ENGLISHのレッスンは1レッスン40分ですので、その場合なら1年半くらいですかね)
というわけで結論ですが、
「アウトプット学習の時間は多ければ多いほど良い」ということになります。細く長く続けていきましょう。
まとめ
では、理論編はまとめに入っていきたいと思います。かなり長い記事になってしまいましたが、記事の内容をもう1度振り返ります。
英語学習はインプットとアウトプットをセットで行うことが必要
もしどちらかに偏っている人がいれば問題ですので、不足しているトレーニングを積極的に取り入れましょう。
アウトプット学習(英会話)は主に4つの効果を期待できる
気付き機能・仮説検証機能・メタ言語的機能。自動化機能の4つでしたね。
特に自動化機能というものが分かりやすく、皆さんに目指してほしい目的ですので、たくさん英語に触れる量を増やしていいきましょう。
英会話は細く長く続けること
3ヵ月等の短期間では仮に朝から晩まで英語のシャワーを浴びるような海外の留学生活だとしても、大きく英語力を上げることは難しい場合が多いです。ましてや日本国内で実施するアウトプットは量不足になりがちなことは明らかですので、最低でも週3回以上程度のアウトプットを1年~2年程度は継続しましょう。繰り返しになりますが、英会話をやっていたが、効果を感じられなかったという人ほど量不足の場合が多いです。
以上、英会話レッスン受講の心得(理論編)ということでお話してきましたが、疑問点・不明点等あれば、気軽にコーチに相談してみてください。(MONEY ENGLISH受講生の方は)
少しでも英会話学習に取り組むべき理由が理解して頂けていれば嬉しいです。
それでは下記、「実践編」の記事にて、皆さまをお待ちしております。