【書籍レビュー】最強の外国語習得法(著:Kazu Languages) を現役英語コーチが読んでみた感想。

2024年9月29日

【書籍レビュー】最強の外国語習得法(著:Kazu Languages) を現役英語コーチが読んでみた感想。

今日は、初の書籍レビュー記事となります。(レビュー書籍は以下)

まず初めに、この書籍の著者である “Kazu Languages(カズマさん)”は、

ポリグロットと呼ばれる、多言語話者なのです。

簡単に紹介すると、

カズマさんが習得した言語はなんと驚異の12ヵ国語(スペイン語、英語、フランス語、アラビア語、インドネシア語、ロシア語、ポルトガル語、ドイツ語、トルコ語、中国語、タイ語、韓国語)ということで、

これらの言語であれば、ネイティブスピーカーとの日常的会話が問題なく出来るレベルだそうです。(ちなみに他にもまだまだ学習中とのこと・・)

そんなカズマさんが、2024年に言語学習についての書籍を出版されたということで、英語コーチである私もたくさん言語学習のヒントを頂けるのではないかと思い、書籍を読ませて頂き、今この記事の執筆に至る訳でございます。

というわけで、今回はこの書籍のレビュー(感想)を通し、英語学習者である皆さんへ、

多言語話者から学ぶ、

「英語学習にも通ずる言語学習の重要な考え方、具体的な学習のコツ、意識すべきマインドセット」

等を、僭越ながら私の知見も織り交ぜて紹介していきたいと思います。

この記事を通して、少しでも皆さんの英語学習へ参考になる情報をご提示できればと思い、書き綴っていきますので、良ければ最後までご覧ください。

(本記事は書籍の要約記事ではありませんので、ご了承ください)

Kazu Languagesって何者?


とりあえず、百聞は一見に如かずということで是非カズマさんの動画をご覧ください。



ご覧頂けましたでしょうか。

ちなみに私はKazu Languagesの大ファンでして、以前からいつも楽しく動画を拝見しております。

一言、

「すごくないですか・・?」

そして、

「めっちゃ楽しそう・・!!!」

というのが、初めて動画を見た私の印象でした。

そして、何よりカズマさんは人間性も素敵なので、見ているこちらも何だかほっこりしますね。

動画を見ているだけで、
外国語で様々な国籍の方とコミュニケーションをとることの楽しさがひしひしと伝わってきますし、もっと外国語を話してみたい!というような言語学習のモチベーションも上がってきますよね。

そんな素敵でモチベ―ショナルな動画を日々投稿されていらっしゃるのが、Kazu Languagesさんです。

言語学習の動機は?


さて、カズマさんが何故これほどまで多くの言語を操れるのかというと、
ひとえに、とてつもない学習量(努力量)があったからなわけですが、
そもそも何故このようにたくさんの言語に興味を持ったのかという点についても書籍中で言及されています。

カズマさんが幼稚園生の頃、地元で開催された「愛・地球博」が外国というものに興味を持ったきっかけで、

幼心に、「色んな国の言語が話せたら楽しいだろうな。世界中の人と話したい、友達になりたい」と願うようになったそうです。

そこから大人になった今でもその興味が消えることなく、今現在も新たな言語を学んでいるとのことです。(すごいですね!!)

言語習得に欠かせない重要なこととは


きっかけは様々だと思いますが、

「外国語を話せるようになりたい!」と思う日本人の方はとても多いのではないかと感じます。

その中で、カズマさんは言語習得に欠かせないことの1つとして、

「言語習得の為には目的意識が欠かせません。」

と書籍内で言及しています。

・何のためにその言語を学びたいのか
・習得した暁にはどんな姿になっていたいのか

これらが明確かつ、具体的でないと学習のモチベーションが続かないからということです。

私がコーチング指導を行う上でも1番最初のカウンセリングで、

「何のために英語を習得したいのですか?」

ということを必ず聞き、目的が具体的でない場合は

「目的についてゆっくり考えてきてくださいね」

と学習の開始すら延期することもあります。

そんな私もカズマさんの意見に100%同意しています。

今までたくさんの英語学習者を見てきましたが、

英語力がしっかり伸びる人というのは、やはり毎日コツコツ学習している方が多いです。(学習を十分量こなしている)

私が過去に担当した生徒さんの中には、お忙しい方もとても多く、

まだ1歳のお子さんがいらっしゃり、奥さんは妊娠中で、仕事も毎日忙しく、毎日料理も担当しているという方を担当した時は

どうやって学習の時間を捻出しているのか不思議だな。。。

と思うことがよくありましたが、その人はそんなに忙しい状況にも関わらず、ほとんど毎日音読の提出があったり、単語テストはなかなかなペースだったにも関わらずいつ実施してもほぼ95%以上正答。

結果、約3ヵ月という短い期間だったのですが、
しっかり英語力が伸びた上で無事、サービスを卒業されました。

そこまで忙しい生活を送りながら、どうしてそこまで頑張れたのかというと、きっと明確で具体的な学習の目的があったからなのではと思っています。

逆に言うと、

目的の意識が薄い、曖昧、弱いという人ほど、

学習を途中で断念したり、日々の学習量が少なかったり。

結果として、思うように伸びなかったという受講生も正直たくさん見てきました。

大前提として、言語学習は一筋縄ではいきません。
(特に日本人学習者における英語学習は大変です)

毎日5分・3ヵ月で、あなたもペラペラに!」

のような内容ペラペラな書籍も多くありますが、そんなに簡単に身に付くものであれば誰も苦労しないわけで、ある程度のレベルを達成するには、
それ相応の強い意志と決意を持って語学学習には取り組む必要があるのだと私も強く思っています。

お勧めされている学習の基本的な考え方


さて、ここからはカズマさんが日々の語学学習で実践されていることを端的にご紹介していければと思います。

ちなみに、言語学習には方法論として大きく2軸あるといわれています。

・感覚的な学び方:
 
子供が母国語を学び得るプロセスのイメージ(習うより慣れろ)

・論理的な学び方:
 
義務教育等で文法や単語等を規則的、または羅列的に覚えるプロセスのイメージ(まずは体系的なルールを学ぼう)

カズマさんの言語習得プロセスは前者の「感覚的な学び」を軸に実施しており、実体験から、

「大人の言語習得の最も効率的な順序は、実は赤ちゃんが母語を学ぶ過程と同じなのではないかと考えている」

と言及しています。

ですので、本記事ではカズマさんの「感覚的な学びを軸にした学習の考え方」を紹介していきます。

(ちなみに私が今まで日本人学習者に長年英語を指導してきた経験としては、留学でもしない限り、後者の「論理から入る方法論が学習の再現性が高く、上手くいく可能性が高い」と感じています。ただし、これはあくまでも私個人的な経験則に基づく意見ですので、自分に合うと思う学び方を選択して頂ければと思います)

STEP①:まずはフレーズ単位で学習する


カズマさんは初めて取り組む言語を学習する際、
読み書きや文法学習から入らないそう。

日本英語教育へのアンチテーゼな感じがしますが、カズマさんはまず実践で使えるフレーズのテンプレートを30個ほどスラスラ言えるようになるまで何度も声に出しながら練習するそうです。

その際必ず大事にしているのが、それらのフレーズを出来るだけネイティブの発音を真似して、声に出しながら学んでいくということです。

目的としては主に2つを意識されており、

・そのままネイティブに使える実用的なフレーズのストックを作ること

・ネイティブの発音をひたすら真似ることで、学び始めの段階からしっかりとした発音を身に付けること

だそうです。

実施の際に大切なこととしては、

「無理なく継続し、深く考えすぎず、ネイティブが発するフレーズをたくさん聴いて、ひたすら真似する」

とカズマさんは言います。

自分が正確に発音できる音は、正確に聴きとれるものです。

つまり、「耳を鍛えること」と「正しく発音出来るよう訓練すること」はセットで実施すべき
という考え方を提唱しています。

ちなみにカズマさん曰く、
「聴き取る力や、聴いた音をそのまま再現する力は生まれつきのものではなく、徐々にコツを掴み、鍛えることが出来る」

というのが個人的な実感だそうです。

完璧でなくとも、その言語の音の特徴を掴み、音の感覚を掴むことがまずは重要ということですね。

英語学習でも正しい音を理解し、それらを発音出来るようになることは非常に重要なことで、

MONEY ENGLISHの場合は毎日の音読トレーニングと、それに伴う発音添削で、「音で言語を捉えることが重要」と、よく指導しています。

STEP②:実践的な文法を学ぶ


STEP①が完了したら、次はリーディングから始めることが良いそう。

「ネイティブの発音を聴きながら、スクリプトを音読する」

要するに、テキストの文字を目で目視して追いながら、同時に声に出して音読するというのがこのSTEPにおける重要トレーニングです。

音読(書籍ではオーバーラッピング)は、リーディング・リスニング・スピーキングを同時に鍛えることが出来る効果的な学習方法で、カズマさん自身も非常に学習効果が高い方法だと感じているそうです。

(MONEY ENGLISHでも音読は最重要トレーニングとして位置付けられています)

そうして今度は、
実用的な文章にたくさん触れながら、感覚的に文章の構造を捉えて、法則を探してみる!というのが次のステップ。

STEP①で身に付けた実践的なフレーズと、会話文(スクリプト)等に触れながら、自分なりにそれぞれの文章の文法法則を予測し、簡単な英文を書いてみるのがお勧めだそうです。

こうすることで、よくある英文法書でガリガリ勉強するような暗記偏重の文法学習ではなく、実践の文脈から外れることなく、正しい文法を身に付けることが出来るといいます。

そしてその応用として、もっと高度な文章も難なく作れるようになっていくという具合に、全てが実践の文脈上で一直線に繋がる 

という考えをカズマさんは持っています。

当書籍ではこの考え方をベースに、お勧めのアプリ、サービス、教材等も紹介していますので、興味がある方は是非書籍を購入してみてください。

その他外国語学習で気を付けるべきこと


カズマさんがかなり多くの時間を言語学習に費やしてきた中で、学習の上で気を付けるべき基本事項を書籍内で紹介していますので、ここでも簡単に紹介できればと思います。

①文法を最初に学ばない

文法を最初に学んでしまうと、完璧主義になってしまい、英語学習そのものや英会話等の実践の上でも良い事があまりないのでは?と疑問を呈しています。

これに関しては私も同意見です。

英会話レッスン等で、執拗に文法等を直してほしい、直したいと思ってしまっている人がいれば注意です。

文法的に完璧な英文を話したい。その為に細かいニュアンス等も積極的に学びたい!というのは、あくまでも些細な課題であることが多いです。

英語学習にはもっと大局的に重要なことがありますので、文法マニアは要注意です。

②例文と音声が無い単語帳で学ばない

例文が無いと使用感やニュアンスも分からないですし、実践から遠い知識になってしまうことが多いです。あくまでも実践を意識したインプットにすべき、というコンセプトは書籍の中でも一貫して書かれています。

また、音声を真似て自分でも発音してみることが重要という話が前述されていましたが、その点を踏まえても音声を介さない学習は推奨しないということですね。

③フレーズや単語を「カタカナ読み」で音読しない

日本人学習者が発音を学ぶ際、よく教材や発音添削に「カタカナのルビ」が振られていることが多いですが、これはお勧めできないとのこと。

「自分で発音できる音は、聴きとれる」という考え方に基づくと、出来るだけネイティブの発音を注意深く聞いて、出来るだけ正確に真似する。

これを出来るだけ忠実に、根気強く続けるのが良さそうですね。

④自分のレベルに合わない教材を使わない


これは、大きく学習者のモチベーションに深く関わるからというのが理由だそうです。

例えば初学者がフレンズ(海外ドラマ)で勉強する、洋画をたくさん見る、等がそれにあたりますね。

あまりに自分のレベルから乖離した教材を選んでしまうと、上達を感じられず、挫折に繋がってしまうということです。

⑤苦手を無理に克服しようとしない


これも学習者のモチベーションを下げてしまうというのが理由ですね。
学習そのものが途切れてしまえば、元も子もありません。

「もう文法の勉強嫌だ!」と思ったら、無理に推し進めず、一旦脇に置いて別の学習(リスニング等)に切り替えてみるのも良さそうということです。

⑥「話せる」のハードルを上げすぎない

日本人あるあるですが、何故か理想とする英語力のスタンダードが高いことが多い印象です。

発音は綺麗で、流暢で、浅くない内容で、文法も完璧で、、等、完璧を目指しがちな人は要注意です。

言語学習に完璧は存在しませんし、何より言語というのは完璧に学び得るものでなく、「一種のコミュニケーションツール(伝わればよい!)」だということを忘れないことが大切だそうです。

書籍を読んだ全体的な感想


今回の記事内で、書籍中にカズマさんが言及されている全てをご紹介することは出来ませんでしたが、少しでも参考になる情報があれば嬉しく思います。

最後に、当書籍の読了を通して、
私が感じたことを最後に書き綴っていこうと思います。

まず重要なポイントとしては、

「いかに実践を意識して学習するか」

というところが、
カズマさんが常に意識されているマインドだと感じました。

実践というと、
日常会話、ビジネスでの使用、その他含めて、様々な実践シーンがありますね。

カズマさんで言うと、

「世界中の人と話したい・友達になりたい」というのが目的ですから、

初対面の人と友達になるには、どんな単語・表現・フレーズが必要で、聴きとれて話せるようになるべきだろう?

という考え方に繋がっていくわけですね。

だからこそ、カズマさんが推奨する必須学習フレーズなんかを見ると(書籍内記載)、かなり実践に即したもの、特には初対面の人と会話するのに必要な疑問文(質問文)がたくさんありました。

繰り返しになりますが、
言語学習の目的を踏まえたこの基本的な考え方が、カズマさんが推奨する学習のプロセスの全体像を象徴しているような気がしますね。

皆さんで言うと、実践シーンに何を思い浮かべますか?

具体的なシーンがいくつも思い浮かんでいますか?(想像できますか?)

自分が英語を実際に、

「どんな風に使っているだろう?」

というシーンが思い浮かばないと、実践に即した学習は難しい可能性が高いということなのだろうと思います。

だから、学習の目的が重要なわけです。

例えば、「海外旅行で行った時に使いたい」という目的があります。

私も普段からよく聞く学習の目的ですが、

・どんなシーンで使いたいのか?

・そのシーンでどんな風に使いたいのか?

・どれくらいそれを叶えたい願望が強いのか?

これらをもっと具体的にイメージ・深掘りすることで、

・自分がどのようなレベルの語学力を必要としていて、

・どのような内容を学習していくべきか

が決まってくるわけです。

だから「言語学習には目的意識が最重要」ということなのかな?と私なりに理解しました。

最後に・・・


この記事の最後に、私がこの書籍を読んでいて1番共感したポイントについて触れたいと思います。

テクノロジーの発展(翻訳ツール、生成AI等)により、コミュニケーションにおける言語学習の重要性が日に日に薄くなっていく中で、どうしてカズマさんは莫大な時間とコストを掛けて、わざわざいくつもの言語を習得したいと思っているんですか?

この質問に対して、カズマさんはこう回答しています。

「外国語を学べば学ぶほど、努力してきて本当に良かったな」と思うことがあります。

それは、「相手の母語で話すと、言語の壁を一瞬で乗り越えて一気に打ち解けてしまうこと」です。

かつて、アパルトヘイト廃止を訴え続けた南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領はこう言い残したそうです。

「相手が理解している言語で話しかければ、それは相手の頭に届く」

「しかし、相手の「母語」で話しかければ、それは相手の「心」にまで届く」

私は、合計3つの言語(日本語・英語・タガログ語、+韓国語も少しだけ・・)を少なくとも日常会話以上のレベルで運用できるのですが、その土地の言語を学び、その言語でコミュニケーションを取るということがとても価値のあることだという経験を何度もした記憶があります。

かつて、フィリピンの大学に留学した際の話です。

日本人学生は勿論私のみで、周りは全員現地人という環境。
(なので、使用言語はタガログ語)

最初は見向きもされず、なんなら若干疎外感すらあり、人によって、私を避ける人も(日本人だからという理由)ちらほらいたわけなのですが、

私はフィリピンという国も、人々も土地も実はすごく好きでして、何かものすごく親近感を感じていたのです。
(今も第二のホームタウンのように感じています)

勇気を持って、

Google翻訳で調べた現地語(あっているか分からない)で、ある時クラスメイトに「自分はあなたの国が好きだ!」という気持ちを本当に簡単に伝えたことがあったのです。

先ほどまでむすっとしていたそのクラスメイトの顔は一気にほころんで、

「Oh!  marunong ka bang mag-Tagalog????(タガログ語話すの??)」

と驚きながら答えてくれたことを思い出します。

その土地の言語を通して自分の気持ちを伝えるという行為には、
相手へのリスペクト、興味関心、好意等、様々な要素が含まれているのだと思います。

言い換えると、

それらを1番簡単に伝える方法が、

「相手の母国語で話しかける」

ということだったのだろうと思います。

本題から逸れそうなので、もう1度正しておくと、

言語習得の究極的な目的というのは、
その言語を運用できるようになることではなく、他人とのコミュニケーションの為、というのは皆さんにも理解して頂けるかと思います。

なので、コミュニケーションの本質にも触れておきたいと思うのですが、

コミュニケーションの本質というのは、

「いかに相手のことを理解してあげたいと思うか」

に尽きるのだろうと思います。

それは言語の問題ではありません。

言語をほとんど介さなくても

・子の親が、言葉を話せない赤ちゃんの気持ちを理解してあげられること

・言語でのコミュニケーションがままならない国際カップルが、とても仲睦まじそうにしていること

これらが成り立ったり、

一方で、言語を介しても

・世界中の人々と同じ価値観を共有するのが難しかったり
 (政治等もそうですよね)

もっと言えば、

同じ言語を話す大人の日本人同士でも分かり合えないこと(友人、家族、恋人等)

ってほぼ毎日のようにあったりするわけです。

なので、究極的に言えば、
コミュニケーションというのは、言語力によって成り立つものではなく、

「相手を理解してあげたいという姿勢そのもの」

によって成り立っているのだろう、とそう感じています。

言語はあくまでコミュニケーションのツール。

それは直接的なコミュニケーションに留まらず、自分の世界・価値観を大きく広げることの出来る便利なツール

そんなことを改めて感じさせてくれた書籍でした。